その2「一杯千円のコーヒー」

これを書いているのは(2004.3.10)岡山ではなく仙台です。昨日から僕の個展がこの地で始まったので一日仕事をして今日は少しだけ仙台の街遊びをしている。
まず東北福祉大学構内にある芹沢圭介美術工芸館へ行き、東北福祉大学のコレクション展を見た。博学の方は芹沢の仕事はよくご存じだろうし、圭介の文字を見て「あれれ」と思われたに違いない。本当は圭の横にかねへんがあるのが正しいのだがいくら苦労してもそんな字は見つからなかった。人の名前を知っていながら省略するのは大変失礼なのだが許してください。
展覧の内容はアイヌ、アフリカ、東南アジア、インドに分かれていて、主にフォークアート、民具の類だ。それらは本来強烈な、あるいはえぐいほどのプリミティブパワーを持っていたはずなのだが、なぜか、まったく何の放射能も発していない。つまり死んでいるのだ。『どうしちゃったんだろう・・・』と戸惑いながらタクシーで宮城県立美術館に向かった。
そこでは「コモン・スケープ」という写真展をやっていた。アメリカのウイリアム・エグルストンをはじめとする内外の八人の写真家が様々なカメラアイで日常を写し取った展覧会なのだが、これも辛かった。 つまり、ようするに、僕は疲れているのだ。へとへとなのだ。モノや写真がつまらないのではなく僕のアンテナがゴムのようにうなだれ、閉じているだけなのだ。
日頃完全に休眠状態の「気遣い」という能力を無理矢理に個展会場で絞り出して僕は干からびてしまった。 こんな時、僕はカフェに行くことにしている。そこで仙台の繁華街にある思いっきりおしゃれなブティックにふらりと入ってそこの女性に「あなたの好きなカフェを教えてくれませんか」と頼んだ。僕は知らない街へ行くとよくこの手を使う。
教えてもらったカフェは駅前のビルの二階にあるHという高級カフェで、店の外にはメニューも、もちろんサンプルもない。どんなに高そうな敷居でもまぁコーヒーではないか、びびってなるものかと入ってみると普通のブレンドコーヒーが1000円だった。その代わりに店の女性はみんな背筋がピンシャンとのびている。しかも注文をとりにきたりコーヒーを運んだり水を入れに来てくれる時、ちょっとお尻を突きだし、ほぼ80度ぐらいの恐ろしく丁寧な礼をしてくれる。面白いから水をがぶがぶ飲んで何度もその儀式を拝ませてもらった。
岡山に帰ったらK氏に教えてやろう。
「あんたもせめて60度ぐらいのやつをやってみろよ」 と。

 

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