その4・¥450が安いのか高いのか?

グアテマラ国際空港から中心部のグアテマラシティーまではバスで向かう。早朝にもかかわらず、バスは庶民の足だから稼働している。もっとも、オレ自身はこう書いているが、グアテマラ大地に初めて足を踏み入れたとき、右も左もさっぱり判らずかなり身も心も不案内だったことは否めない。だって、今やバックパッカーのバイブル的存在である“地球の歩き方”なんか大嫌いなんだもーーん。トラベルはトラブル。
 オレの尊敬する本多勝一氏は、あまりにも著書が多いのでどの本に書いてあったか は失念したが、以下のようなナイスな表現をしたためている。主旨は大凡こんな感じ だったと記憶する?
 「海外へ行くときにゃあのお、初めての国じゃったら一人がええでホンマ!! なんでか言うたらのお、もし踏み込んだ国がインドと仮定したらじゃ、インドが、ここは100%インドーーーゆう感じで迫ってくるがな。せえが二人じゃってみい? 50%に割り引かれるてしまうからのお。もったいねえでホンマ!!(岡山弁変換)」
 グアテマラのバスはディーゼルで動く。黒々とした猛煙を後尾から排泄し、苦しげな雄叫びと唸りを上げて走る。正に、この国の多数者である貧民の声を代弁しているかのように。
 オオッ!! なにやら今回の原稿は、このHPでエッセイ欄を担当している矢野画伯のような哲学モドキ的文体になってきたぞ。それはそうだ。致し方ない。ついさっきまで、中国新聞連載中の真摯かつ心温まる原稿を書いていたのだから。突然、人格変換しようにも、クリックポンというわけにはいかない。だからといって、これはこれでいいことにする。ここまで書いて、消去ではもったいない。ミスター川本を師と仰いでいるオレなのだから、自身の損になるような事は慎もう。ミスター川本がオレに原稿依頼したときの言葉が忘れられない。
 「野田さん。私が原稿料を払うなどというのは、後にも先にも野田さんだけなんですから。ですから、自由に、野田さんらしく地のままに健筆をふるってください。ただですね。ハイソなHPを目指してますから酒池肉林体験だけは省いてもらえれば。もちろん、個人的には興味深く聞かせてもらいますけど。そっちの方が、やっさしいんでしょね!!??」
 しかし、この作文掲載にギャラリー・グロスの常連さんより早々にお叱りが入ったとか。いつ突発的に消え去る運命なのかは定かではないけど、ミスター川本の常識と寛大さと人間(自身の得になる)を把握する力量に期待したい。
 あーーあ。またまた軌道を逸れてしまった。
 さてと。グアテマラという国名を聞いて、ギャラリー・グロスに出没している方々で、まず脳裏に浮かぶのはコーヒーだろう。ギャラリー・グロスではグアテマラをワンカップ=¥450で販売しているけれど、と記したところでグロスのHPにジャンプ。あれっ?? グアテマラの値段は表示されていない。グロスではあまり重要視されていないのだろう。基本的に、グロスでグアテマラは“ガテマラ”でしかないのだから。オレはこの表示を見てとても悲しかった記憶がある。名前さえちゃんと覚えてもらってないグアテマラちゃんがとても哀れで。もっとも今は、グアテマラとあまり美しい字とはいえない文字が踊っているけれど。
 まあ、オレもキッチリとは明言できないのだけれど、グアテマラが誇れる輸出モノを数えると、やはりコーヒーが突出しているはずだ。バナナなどもあるけれど、コーヒーほど有名ではない。
 で、このコーヒー。オレはグアテマラではないけれど、隣国のエルサルバドルでコーヒーの収穫を手伝った経験がある。隣国と書けば遠そうだが、首都間はおんぼろバスでも5時間の距離。スコブル近い。
 コーヒーを収穫に行く。オレの友人の家族と共に大型トラックに他大勢と乗り込んで。収穫期は決まっている。どの季節だったかな? 陽が上らない時間から出向き、陽が落ちるまで働く。コーヒーを収穫する場所をフィンカと呼ぶが、フィンカの近くに住まない人たちは、園主に提供されたおんぼろ納屋で寝泊まりする。それも家族皆で。一粒一粒、収穫高制だから、子供の手も借りる。学校などは無視。歩ける子は働く。熟した赤い実をもぎ取ればいいだけの単純作業だから幼児にでもできる。早い遅いは別にして。とにかく、稼げるときに稼ぐのだ。フィンカに来る季節労働者に定職持ちなどいないのだから。
 サンタなんとかの缶コーヒーのテレビ宣伝でフィンカの様子が映しだされるが、あれは正しいフィンカの姿ではない。フィンカで働く皆は、そんな美しい衣装など着ていない。いるわけがない。
 コーヒーを収穫するとき、大人は腰に籠を吊す。一籠を収穫するのに約3時間平均だったかな? 明るい記憶がないので間違いかもしれないけれど、それだけの作業をしても、オレの記憶では200円の現金にもならなかったと思う。とにかく、驚くほど安価な値で人間が苦役させられていた。それでも出向く。他に現金収入の術はないのだから。
 平坦な場所なら収穫もはかどるだろう。ところがフィンカという場所は斜面が多い。オレも滑り落ちて、愛用の一眼レフカメラをあやうくお釈迦にするとこだった。単純労働だけど、事はそう簡単には運ばないのだ。
 そして、昼食時に飲むコーヒーはインスタントのネスカフェだ。良いコーヒーは全て輸出に回される。私も約2年間を中米で過ごしたが、どこでも、貧民でもない一般家庭でさえもネスカフェを馳走になった。
 グアテマラでグアテマラを飲めず、グロスでグアテマラを口にするオレ。
 ¥450が安いのか高いのか? 今も良く分からないでいる。

珈琲農園の家族

珈琲農園の親父

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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