そう簡単に中央アメリカ(以後は中米)には立てない。本来ならば、ディスカウントチケット取得からスペイン語基礎知識までを詳細に記さねばならないのだが、一回分の原稿料がコーヒー2杯の現物支給に確定したとのことでスコーンと省く。文句があるなら、先日、育毛剤を激安量販店で大量購入したらしい? ミスター川本に直訴してくれ。
で、とりあえず“やっさしいがな!!”の復習をする。オレは第一回の文面内で、
「コーヒー2杯分。現金じゃねえで。コーヒーの現物支給じゃがな」
「そりゃあ、やっさしいなあホンマ! もう一声。ケーキ一つ分増えてもええんじゃねん?」
と、謙虚かつソフト&遠回しでミスター川本に現物支給の増量を促した。すると、この第一回の原稿送信を確認したミスター川本からメール拝受。メールの件名には“珈琲2杯のエッセイ”とあった。これを見た瞬時、脳裏で雄叫びを上げた言葉が正に、
「やっさしいがな!!」
この場合の深い意味合いを広辞¥で検索すると、
「オッドリャー!! ええ根性しとるでホンマ!!」
と記してあるはずだ????
ヨッシャOK!! いつまでもブチブチ言ってられない大和男の子は。そろそろバッグパックを担いでインターナショナルエアポート・ナリーータに向かうとするか。
たまらんなあ、国際空港というのは。といっても、オレが初めて中米の地を目指したのは、今から約18年くらい前じゃないか? パスポートはまだ紺色だったような気がするし。
成田国際空港。アテンションプリーズなんとかかんとか? のアナウンスが心躍らせてくれるぜ。各航空会社のスッチーが隊列を組んで闊歩しながらオレの目の前を通り過ぎていく。濃紺のストッキングに包まれた美脚。ウーーム。ええがなエエガナ。やっさしいがな!! しかし、見るだけミルダケ。嗚呼!! 辛抱たまらん。ちょっと触らせて?
とはいえ、この雰囲気と香り。ロマンとアドベンチャーを求めて異国に旅立つ序章としては最高のシチュエーションではないか。
とばかりは言ってられないのだ実は。オレが手にしているのは一年間オープンの格安チケット。指定された搭乗機に乗り遅れた場合、ノーマルチケットのように便を変更という技は使えない。その場でアウト。格安とはいっても十万円ほどがお釈迦様。
とにかく、是が非でも乗り込まなければならないのだ。
こういう時、時々突発的に発生するブッキングオーバーが恐い。つまり、定員オーバーのチケット販売をしているわけで、こういう場合はチケット会社がなんとか処理はしてくれるのだが、やはり乗りたい便には乗れない。そりゃあオレなんか、成田–ロスアンゼルス–グアテマラとキッチリ購入を済ませ、“予定はあくまで予定であって決定事項ではない”などとほざいている輩とブレンドしてもらってはとっても遺憾である。
と書いたところで気付いたのだが、原稿料との折り合いでここの格安チケットについては省略じゃあねえかよ。参ったなあ。まあサービスだ。
成田–ロスアンゼルスは気流の関係で往復路では一時間程度の誤差があったはず?
間違っていたらワリイワリイで済ませてしまうが、成田–ロスアンゼルスは約九時間で、ロスアンゼルス–成田は約十時間じゃなかったか? 昔々の話しだからなあ?
話しが長くなるので機内での、オレと目の青いマダムとの偶発発作的ロマンスは書かない。恥ずかしくって書けなーーーい。映画・エマニエル婦人を覚えてるかよ?
あの出だし。あとは想像してくれ。
オット!! これは小説じゃなくてノンフィクションモドキを期待されてたんだっけ?
早朝にロスアンゼルス着。ここからが長い。オレの場合、ロスの空港はハブの意味で使うだけ。乗り換えのグアテマラ便はほとんど深夜に集中しているから、約十八時間をロス空港内で過ごさなければならない。もっとも、ロス空港内で働くヤツ等の多くがヒスパニック。コミュニケーション問題なーーし。
「オメー、スペイン語やこお喋れるんか?」
こんな疑問系した顔・顔・顔が目に浮かんでくるぜ。
「ポルスプエスト・アーブロ・エスパニョール(あったりめーじゃがな。スペイン語ぐれえ、わしゃあ喋れるがなホンマのホンマ)」
十八時間のマンウォッチング。しかし、いろんなヤツ等がいるもんだぜ。オレの目前で、舌と舌を絡ませながらハードコアを演じてくれる白人のニーチャンネーチャン。
メッカに向かって礼拝しているイスラム教徒。メイドインJAPANのラジカセを、幾つも抱えて凱旋するメヒカーノ。厭きることはない。
オット!! オレの便のチェッキングが始まったとのアナウンス。グアテマラまでは約五時間のフライト。予定通りに神が導いてくれれば、明日早朝の五時にはグアテマラの大地を踏むことになるのだが……