矢野エッセイ
その32「答えるは安く聞くは難し」
2007年7月3日
個展から帰るとグロスマスターKはバカの一つ覚えのように、判で押したように、条件反射のように、それしか言葉を知らぬ九官鳥のように「完売ですか?」とお聞きになる。
その28「秋深まりて恥深し……」
2006年10月12日
最近二冊の本を読んだ。僕は月に一二回図書館に行く。館内のコースはだいたい決まっていて、小説、美術、料理の順に二三冊ずつ選び、そそくさと十分ほどで帰る。
その26「ある雨上がりのシュールなひととき」
2006年7月16日
「ワレワレが死ぬとして、その死因はなんだろうねぇ」
助手席のMさんはフロントグラス越しに町工場の建ち並ぶ殺風景な街並みを見ながらボソリと言った。
その25「再びKさんのこと」
2006年5月16日
それから数ヶ月、僕は高知と倉敷での個展を終え、松江と神戸の個展を控えて「くそっ」とか「あれれ」とか「あーあ」とか「どないしょう」とか、まともな大人とはとても思えぬ独り言を呟き、時々グロスでもっと奇怪な話をしては仕事にいそしんでいる。